FC2ブログ
スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | top↑
(牙狼SS)尾行ゲーム
2012-06-23 Sat 00:42



以前拍手御礼小話でアップした「尾行ゲーム」を
ブログにアップしました。











それはほんの 些細な出来心、





拍手御礼小話・尾行ゲーム





市井を歩む鋼牙の姿は、遠目から見ると 泰然自若と、まるで流れる川のように澱みなく
優雅な足取りに迷いなく、例えるなら某巨大ターミナルの動く歩道に乗って静止しながら移動しているかのような滑らかさがあるが、実際 間近で見ると 常人とは明らかに違うスピードで風のように通り過ぎてしまうため
あの様な 異端な風貌にも拘わらず余り人目につくことはない。



今日こそは――



ここ数日の 御月カオルの「マイブーム」


それはほんの些細な出来心、尾行ゲーム。


鋼牙が 「行って来る」 と 屋敷の扉を出て行ってから きっかり1分後、
カオルもまた、「行って来ます!」 と 飛び出して行く。


やれやれ、というゴンザの苦笑いに見送られ――


手に持つは 携帯電話。その画面は ストップウォッチ。


よーい、ドン!


逸る心を抑えつつ 無心に白い魔法衣を追い走る。
足音を忍ばせ、屋敷から続く林の木々に身を隠すなど 二日目にして放棄した。
そんな事をしていたら あっという間に鋼牙の姿を見失ってしまうからだ。
その二日の鋼牙を尾行できた時間は 最短記録で36秒。



遠くから見ると 優雅に むしろ悠然と歩いているように見えるんだけどなぁ……



しょんぼり戻ったカオルを ゴンザは何も言わずにただ微笑んで迎え入れてくれた。


三日目は なりふり構わず 走った。
もちろん ヒールの靴など 昨日で放棄した。
運動靴に ヒラヒラは一切ない軽装。
握り拳で走った。


記録は飛躍的に伸びて5分26秒。


常々 画家は体力勝負よ、と思っていたが打ちのめされた。
一旦 創作活動に入ると 寝食を忘れて長時間絵筆を握る体力と
長時間 走り続ける体力とは 同じ持久力という名がついても根本的に違うのだ。



四日目。


カオルにチャンスの神が降りて来た。


鋼牙が 迎えに来たレオと共に家を出たのだ。





レオとは いつか 霊獣に会いに行った時に一緒に歩いている。
長身のレオは 確かにカオルの歩くペースより圧倒的に速かったが
それでも ついて行かれない程ではなかった。



今日こそは。



二人が出て行ってから きっかり1分。いや、


もう こうなるとゴンザも心得たものだ。
携帯電話のストップウォッチが55秒を告げた所で
扉を大きく開け放ち、


「カオル様 行ってらっしゃいませ」


と、微笑む。



「はい! 行って来ます!!」






勢いよく飛び出して行ったカオルが しょんぼりと戻ってきたのは それからすぐで、




「…… 鋼牙も レオくんも 確かに私の目の前を歩いていたのに、一瞬 お日さまが眩しいなって空を見上げた瞬間に 
…… 消えちゃった」



「カオル様、」



ゴンザは鷹揚に微笑む。




「たまには自転車で気晴らしに走ったらいかがですか? 今日は良いお天気ですし」 




「ん? 自転車? 自転車! 自転車ーっ!!」



カオルの顔が パァっと明るく輝いた。
明日は自転車だ!
自転車を使って尾行するんだ!



今でこそ 定期的な挿絵の仕事や 壁画の仕事の依頼で 商業画家として独り立ちしたカオルだが
その昔は とても絵を描くだけでは生活が成り立たず
様々なバイトをして生活を繋いで来た。
自転車を使ったメッセンジャーの仕事は 余り長続きはしなかったが
龍崎駈音の原稿を出版社に届けたり そうだ、鋼牙に呼びつけられて 東の冴島邸をはじめて訪れたのも
あのバイトをしていた頃だった。時計を取り上げられて…… あの頃は鋼牙は 本当に何を考えているのかさっぱりわからない無口で無愛想で 絶対 友達にはなれないタイプだと思ってたんだけどなぁ




「ゴンザさん! 私 ちょっとアトリエまで行って自転車を取って来ます!」 






五日目。



いつもの朝食の席。



「最近 早起きだな」



ボソっと鋼牙が呟く。



「ええっ? そ、そう?」



焼き立てのパンをゴクンと音を立てて呑み込んだカオルが
慌てて 牛乳を流し込みながらトントンと胸を叩いた。



『カオルぅ、焦るな。急いては事を仕損ずる、だ』



「な・なんの事?」



『いや、こちらの話だ。なぁ 鋼牙』



クツクツ笑うザルバを無視して鋼牙が目を逸らした。



「今日は 夕方まで書斎に籠る。 ゴンザ、指令書が来たら教えてくれ」



「えええーーーーーっ!」



思わず ガタンと立ち上がるカオルは失望の色を隠せない。



『カオルぅ、何か問題でも?』



からかうザルバに 何も言い返せないカオルは



「別にー」


と 不貞腐れて応じるのが精一杯。



でも 明日こそはと 密かに闘志を燃やすカオルの双瞼に宿る光は強かった。






そしてあんな事言っておいて あとでこっそり私を騙して出掛けちゃうんじゃないか、と
密かに鋼牙の動向に細心の注意を払っていたカオルだったが

鋼牙は宣言した通り 本当に 夕方まで書斎から一歩も出る事は無く、
反対に 呼び出されたレオが深刻な顔で数度 出入りを繰り返すだけだった。




六日目の朝。




いつもの通りの朝食、
いつもの通りの会話、
いつもの通りの支度、そして鋼牙が出て行く。


カオルの手に握られた携帯電話のストップウォッチが 時を刻み始め、
カオルはこっそり 玄関ホールに隠していたワンショルダーのバックを素早く背負うと
カウントダウンを始めた。



「5・4・3・2・1、 行って来ます!」



ゴンザが開け放つ扉をスルリと抜け
ポーチに停めてあった自転車に颯爽とまたがると
林の中に見え隠れする白いコートを目指して 一心不乱にペダルを踏みしめる。


ぐんぐんと加速する自転車。


心地よく耳元を擽る風、そしていつもなら引き離される一方の鋼牙の白いコート姿が
どんどん近づく。


「……えっと、 追いついちゃったら意味なかった」


カオルは確かな手応えに緩む頬を抑えきれないまま ペダルを踏みしめる力を僅かに緩める。


「でも、油断大敵。なんてったって 鋼牙だもん」




鋼牙にかかると この世界が平面だけではなくなることくらいカオルはとっくの昔に承知していた。

ホラーに襲われた時。
知り合ったばかりの頃の零が氷のような冷たい目をしながら
彼の両刀で路地の壁に火花を散らしゆっくりと……そう、殺しに……来た時。
尊敬する画家、青木久がマンホールから出てきた怪物に襲われた時だって
鋼牙はどこからともなく降ってわいたように飛び降りて来てくれた。



ったく、 鋼牙ったら どんだけ高い所から飛び下りれば気が済むのよ



こっそり胸の内で毒づくカオルは けれどさすがにかつて鋼牙が30mもの高さを飛び降りながらシグマと死闘を繰り広げたことは知らなかったが――





冴島邸はもう遥か遠く
馴染みの公園を通り抜けた頃まではカオルもよく辺りの地理を把握していたが
街中を外れ、だんだんと民家も疎らになってきた頃はもう自分が何処を走っているのかも
怪しくなってきた。


ストップウォッチは快調に時を刻んでいる。


記録大幅更新!


今日の鋼牙は カオルが危惧したような
自転車が通れないような道は何故かうまく避けてくれている。
階段があるにも関わらず スロープを下ったり
歩道橋をあがらず 少し遠い横断歩道まで歩みを進めたり――


自転車で尾行するには うってつけとも言える鋼牙の道の選択は
カオルにとって幸運この上ない。




一方の鋼牙と言えば 目的地である郊外の寂れた共同墓地に向かいながら
意識は油断なく 背後から追走してくる一台の自転車と、その自転車を懸命に漕ぐ人物へと向けられていた。
全く 一瞬たりとも気が抜けない。
自転車を漕ぐカオルの意識が全てこちらに集中している分
周りの状況に無頓着過ぎるのだ。



信号に到達する時間と渡る時間を計算して自分の速度を調整したり
暴走気味の車と搗(か)ち合わないよう 敢えて反対の通りの広い歩道を選択したり
まあ それでも 万が一の突発的なアクシデントに備え
そこは抜かりなく手は打ってある。


―― ゴンザの言った通りだ……


鋼牙は軽く溜息をこぼしながら 胸の内でひとりごちた。



当初 鋼牙は ゴンザの進言に異を唱えていた。
”カオルが知る必要はない”、と。



ゴンザが鋼牙に



「カオル様に鋼牙様の昼間の仕事を見せる良い機会がやって参りました」



と 言ってきたのは5日前のこと。
オブジェの浄化に出掛けた直後、カオルが追ってきた気配に
鋼牙は何用かと 歩みを緩めカオルが追いつくのを待ったところ
あろうことかカオルは手近にあった木に隠れた。

呆れて再び歩き出した鋼牙を 抜き足差し足で追いかけようとするカオルの余りの滑稽さと、
それ以上に余りの可愛らしさに自制心を保つのに苦労した鋼牙は、結局笑いを噛み殺しながら彼女を置き去りにすることを選択した。


帰還すればゴンザの進言。


ゴンザ曰く、今は市井の人間であるカオルとて、いずれ鋼牙と婚姻関係を結べば
魔戒に関わらざるをえない。
やがて時が満ち、牙狼の称号を継ぐ者を生みし母ともなればそれは尚更であり――



「カオル様は ホラーに憑依された人間を葬り去る鋼牙様の姿を何度も見ていらっしゃいます。
ホラーに憑依された人を斬る、それは魔戒騎士の宿命…… けれど 目の当たりで人を斬る鋼牙様を見るカオル様にとって、それはとても残酷な事象でしょう。
カオル様は知るべきです。魔戒騎士は人を斬るだけに非ず。
陰我を放つゲートを破壊し、魔界とこの世界とを繋ぐ因縁を断ち切る、即ち、魂の救済をなさっているという事を――」



鋼牙が 頑なに その必要はない、と言い続けたのには
後にも先にも カオルには魔界に関わりを持たせたくない、
できれば市井の中で幸せにその生涯を全うしてほしい、という気持ちに他ならなかったのだが
結局鋼牙がゴンザの進言を受け入れたのには


「鋼牙さんが望む、望まないを別にして
カオルさんはもう鋼牙さんの思い人として広く知れ渡っていますよ?
もう とっくに結婚したって思ってる魔戒法師もけっこう居ますしね」


と、カオルの尾行を面白がりながら
事情を聴いて発したレオの一言だった。




一日書斎にこもってレオと様々な手筈を整え
現在に至っている。



昼間の仕事をするべく、墓地に向かう鋼牙、
その鋼牙を一心に追うカオル、
そしてそのカオルを付かず離れず見守るレオ。



傍から見たら 小さなヒナを間に挟んで導く親と後ろから追う兄のカルガモの行進さながらに。



カオルが避けきれないと判断した障害物は ことごとく
レオの魔導筆によって取り除かれては来たが
それでもカオルは鋼牙が想像した以上によく追随してくる。



「カオル様の忍耐力、精神的持久力を見くびってはなりませぬ。
華奢な外見に秘め隠したカオル様の本当のお姿は 案外鋼牙様が思っていらっしゃる以上に
筋金入りの粘り強さがありますぞ」



とは ゴンザの見解で
確かに


―― ゴンザの言った通りだ……、


と認めざるを得ない。


浄化の目的地は 遠方の共同墓地。
カオルが途中で脱落した時にはレオが回収して先に屋敷に戻る手筈を整えていたが
どうやらそれも杞憂で終わりそうだ。



目的地の墓地はもう目の前。



そしてカオルは 相変わらず元気に、力強くペダルを踏んでいる。




―― 見せてやる。
お前に、魔戒騎士の仕事とやらを。



鋼牙は 確かな足取りで鬱蒼と草木の生い茂り 昼間にも関わらず不気味に静まり返って荒廃した墓地へとその身を滑り込ませると
ザルバを眼前に掲げた。



『鋼牙、うじゃうじゃゲートがあるぞぉ ここは陰我の巣窟だ』




「承知」



鋼牙は赤鞘から魔戒剣を引き抜くと、
ザルバの的確な指示に従い墓石へと突き立てる。
そしてブワリと浮かび上がる黒い邪気を空中で薙ぎ倒すように斬り捨てた。
うめき声のような 悲鳴のような おぞましい声をあげ
邪気は雲散し、けれど鋼牙は既に次のゲートへと剣を突き立てる。



渾身の力を込めてゲートを封印する鋼牙の姿を
カオルはじっと見つめていた。




「…… すごい……」



白い魔法衣を翻しながら 袈裟がけに振り下ろす魔戒剣。
邪気を掬いあげながら 横一文字に打ち払い、
或いは 串刺すように突き上げ、返す刀で一刀両断に刎ね落とす。



それは 日頃冴島邸の庭で鋼牙が鍛錬している時と同じ剣捌き。
まるで美しき戦いの神、オリンポスのアレスさながら
凄みを秘めた鬼気迫る剣はまた、美しくも壮絶で




ふと気付くと いつの間にか隣にレオが立っていた。
邪気からカオルを守るよう 緩みなく魔導筆を構えながら。




「レオくん…… 鋼牙は 昼もこうして戦ってたんだね……」



「はい。 人々の陰我によって出現する魔界とこの世界とを結ぶゲートを破壊して
ホラーがこの世界に出現しないようにしているんです」



「でも、人間の陰我なんて 無くなる事はない――」



「そうです。だから鋼牙さんの戦いにも 終わりはないのです」



「鋼牙はそれでいいのかな……」



「鋼牙さんには 戦いの糧となるカオルさんが居ますから――」



「鋼牙…… ありがと……」



カオルは知らず知らずのうちに感謝の言葉を口にしていた。



――私たちを守ってくれて
――私たちの生活を護ってくれて……



最後のゲートに魔戒剣を突き立て 陰我を破壊しこの辺り一帯を浄化した鋼牙は
大きく肩で息をつきながら ゆっくりとカオルとレオを振り返った。



「鋼牙っ!」



自転車から手を放し、鋼牙に向かって一心不乱に駆け寄ったカオルが
勢いそのままに鋼牙の胸に飛び込む。




「鋼牙っ! ごめんね、ごめんなさいっ 内緒でこっそり跡をつけてきちゃった。
鋼牙はこんな風に あの恐いバケモノが人間に取り憑くのを防ごうといっつも戦ってたんだね、鋼牙、ありがと! 本当にありがと!」



自分より頭ひとつ小さいカオルが 渾身の力でぎゅっと しがみ付きながら
頬を紅潮させ、お礼を言う様を 鋼牙は不思議な気持ちで聞いていた。


感謝など、される覚えはない。


オブジェを浄化し ゲートを封印する。
それでも現れる魔獣ホラーは 金色に輝く牙狼の鎧を召喚し、命がけで戦い剣に封印して魔界に返す。

魔戒騎士になると決意した時に
その宿命は受け入れた。
戦う事は当たり前だと思っていた。
守りし者としての使命に目覚めた今も
戦いは己が宿命、感謝など
感謝など、されたいと思ったこともないし
されるつもりも――




ふっと息をついて 鋼牙は強張った肩の力を抜きカオルの温かい体躯を受け入れる。




「ね? 鋼牙、ありがと! ありがとうね!」


念押しするように 小首をかしげながら下から覗き込んで来るカオルと目を合わせ
鋼牙は穏やかな顔で応じた。



「ああ」



己が宿命と割り切って 無機的にホラーと対峙していた若いころの自分には到底芽生えなかった感情だ。
労われ、その労いを受け入れ この胸に灯る温かな感情……

鋼牙の四肢、隅々までに漲(みなぎ)る士気、
熱情、そして気力。 

―― まったくこれがゴンザの画策だとしたら……  


鋼牙はカオルの向こう側に ゴンザが満足気に頷きながら微笑んでいる姿を見た気がした。






カオルもこぼれるような笑顔を見せながら鋼牙の広い胸にしがみつくように抱き締めていたが、
突然 



「あっ!」



と 小さな叫び声をあげ 慌てて鋼牙から離れると
みるみるうちに耳まで真っ赤に染めながら
一生懸命レオに言い訳を始めた。



「あ、あの これはね、えっと なんていうか ほら、西洋風にスキンシップで
あの、なんて言うか 挨拶! そう、挨拶みたいなもんなのっ!!」

って言うか ちょっと レオくん!! いったい何時から居たのよ!?
もしかして――」



涼しい顔でレオは答える。




「はい。 昨日鋼牙さんに頼まれて カオルさんの後を”尾行”していました」 



「えっ!! ちょっとっ! 鋼牙、そうなの? もしかして…… もしかして鋼牙、気付いてたの?」




「…… 帰るぞ」




長身の二人の男に挟まれるように自転車を走らせる小柄なカオル。
傍から見たら可笑しな一行だ。



「もぉっ ちょっと 足がパンパンだよー もっとゆっくり行ってよ」



と 剝れながら 全力でペダルを漕ぐカオルは それでも両隣の男に遅れがちで――



――遠くから見ると 優雅に むしろ悠然と歩いているように見えるんだけどなぁ……
だけど なんでこんなに速足なのよっ


毒づいているうちにみるみる遅れを取る。


たまりかねてレオが



「鋼牙さん、昼の仕事は終わったことですし、もう少しゆっくり歩いてあげれば――」


と助け船を出してくれたが



「回収はお前に頼んだはずだ」



と 言い捨てて 結局鋼牙はさっさと行ってしまった。





**************






「か 回収ってっ 人を廃品回収される粗大ゴミみたいに言わないでよぉぉぉぉっ」






~完~








スポンサーサイト
別窓 | 脳内妄想二次小説 | コメント:0 | top↑
<<(牙狼SS)マリヴの誘惑1 | もうひとつの夜~GARO~ | (牙狼SS)続・チョコレート・ベルガモット>>
 
 
 
 
 
 
  管理者だけに閲覧
 

| もうひとつの夜~GARO~ |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。