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(牙狼SS)その名を継ぎし者  下
2009-07-15 Wed 15:13
零くんは チャラ男だけど たぶんもう本気で誰かを好きになったりしないんじゃないかな・・・

そんな風に思うと
零の孤独とか寂しさとか
けっこう ぐっと来ちゃったりします。

銀牙騎士・絶狼に幸あれー




「その名を継ぎし者」 完結編は 続きよりどうぞ。











 







翌朝早く、鋼牙はゲートとなるエレメントの封印へ、カオルはゴンザに送られて町中の産婦人科医院へ出かけた。

やがてゴンザの待つ車へと戻ったカオルは、はにかんだ笑顔とともに小さなピースサイン。
その手を自分の両手で包みこんだゴンザが感無量の面持ちで

「おめでとうございます」

と握りしめた。カオルが北の屋敷でともに暮らすようになって7か月過ぎた春の事であった。




 鋼牙が幼い頃よりずっとその成長と、苦悩と、戦いを見守ってきたゴンザには信じられない程の喜びの日であった。まさかこの様な日が来るとは・・・思わず何かに向かって拝まずにはいられない、ともすれば涙腺が緩みそうになるゴンザであった。



 昼近くになって鋼牙が屋敷に戻ってくる。



「ほらほら、カオル様、走らないで、」 

「もう、大丈夫だよ!」



いつにも増して賑やかな二人に出迎えられた鋼牙が、
勢い余ってそのまま胸に飛び込んできたカオルを抱きとめ、



「大丈夫なのか?」

と聞いた。



「うん。別に病気じゃないから日常生活を送る分には構わないって。っていうか、できるだけ日常生活を送って下さいって言われちゃった。」

カオルが報告する。


鋼牙のコートを受け取りながら



「本当にようございました。鋼牙様、カオル様、おめでとうございます」



と祝福するゴンザなど、ついには感極まり涙を浮かべるほどであった。






 簡単な昼食を済ませて支度をしていると、零がバイクでやってきた。



「ベビーちゃ~ん、キミの本当のお父さんが会いにきてあげたよぉ~」



ゴンザに案内されて居間に通された零を迎えたのは、喉元にまっすぐ突き付けられた鋼牙の剣先だけであった。



「お前、よっぽど命が惜しくないとみえるな」



「あれ~?カオルちゃんは?」



「おっまたせ~。」



カオルがパタパタと階段を駆け下りてくる。



「あ!カオル様っ」慌てて駆け寄るゴンザより早く、鋼牙の一喝が邸内に響いた。



「走るなっ!」



鋼牙の剣幕に腰の抜けたカオルが、そのまま階段にストンと腰掛ける。



「なによぉ、もう、びっくりするじゃない、
・・・だから、いつもと一緒で大丈夫なんだってば」



「まぁまぁ、心配する気持ちはわかるけどさ、鋼牙ももうちょっと言い方ってもんがあるだろ。さ、出かけよう」



険悪になりそうな空気を取り成す零。





 それから一行は零の案内で西のニレの丘を目指した。


途中で西の番犬所に寄る二人を待ち、木陰のオープンカフェで休憩するゴンザとカオル。



「ねえ、ゴンザさん、零くんってやさしいよね。」



「そうですな」



「でも、ホントは誰よりも辛くて寂しくて一人ぼっちだったんだね。」



「鋼牙様もそうでした。鋼牙様はもう一生、どなたかを愛する事はないと思っておりました。父上の大河様は、バラゴとの闘いの中で飛び出した鋼牙様を庇われて、その命を落とされました。間近でそれを見た鋼牙様は、愛や人間の情を憎まれたのでしょう。愛を棄て、情けを捨て、修行に明け暮れるその姿は痛々しい程でした。そんな鋼牙様を救って下さったのはカオル様です。」



「私が救った?」



「ええ。鋼牙様は命を懸けてカオル様を救われました。そしてまた、カオル様に救われたのですよ。」



ゴンザがゆっくり頷いた。






 


 西の番犬所を出た騎士二人と共に一行が西のニレの丘に到着したのは、
少し日が傾きかけた午後3時頃のことだった。


海からの風を受け、なだらかに広がる丘の上には柔らかな初夏の日差しを浴びた3つの墓標が長い影を作っている。


 横には数10mにもなるハルニレの大木が白い小さな花を沢山つけてすっくと空に向かって立っていた。



零が静かに進み出る。
続いてカオルが墓標の一つずつに白い花輪をかけ、零の横に膝をつき祈りを捧げる。ゴンザと鋼牙はその後ろにそれぞれ立ち、頭を垂れた。



 西の丘に静かな時刻(とき)が流れる。


鳥の声と、頬を撫でる暖かな春の風と、潮の香り、そして祈りを捧げる4人の影。



やがて零が笑顔でカオルの肩に手を置くと腕を取り、立ち上がるカオルを支えた。



「また、来ます」

カオルが小さく呟き、それから揃って墓標を後にした。


途中何かに気づいた零がふと墓標を振り向く。



「鋼牙・・・」



つられて、カオルとゴンザも振り向いた。



「・・・・!」



先ほどまでカオル達が居た墓標の前に、白いコートの裾が地面に広がっている。鋼牙だ。


片膝をつき、左手を胸に、右手を背にまわし、深々と頭を垂れ、騎士の礼を捧げている鋼牙の姿がそこにあった。



「鋼牙はきっと道寺に感謝しているのよ。零を養子にし、立派な魔戒騎士に育てあげたことを・・・あなた達は良いコンビだわ。」



零の手の甲でシルヴァが呟いた。



「鋼牙様のあのような姿を拝見したのは初めてです。鋼牙様は本当に・・・愛をお知りになり変わられた。」



ゴンザがが胸を打たれその場に立ち尽くした。



「鋼牙・・・」



零もまた胸を熱くし俯く。




やがて白いコートが翻り、立ち上がった鋼牙は、墓標に向かい一礼し、丘を降りてきた。


零と目が合う。お互いに頷いた。そこに言葉はなかったが、カオルにもゴンザにも二人の熱い気持ちは手に取るように伝わってきた。





無言で丘を下りた4人だったが、車に乗ってしばらくすると、おもむろに鋼牙が言い放った。



「子供の名前は雷牙だ。我雷法師の一字をもらった。」



「そうなの?」

助手席に座っていた零が少しがっかりしたようにカオルを振り向く。


「お前の名前はカオルが願い下げらしい」



「ちょっとぉ、人聞きの悪いこと言わないでよ。二人で決めたんでしょ、」

カオルが後部座席で隣に座る鋼牙の腕を叩いて抗議する。



「あのね、零くん、昨日の夜二人で話したの。銀牙って名前は私たちがもらうべきじゃないよね、って。だって銀牙は、いつか生まれる零くんの子供の名前だもん。」



「俺は子供なんて・・・」



言いかけた零をゴンザが柔らかく制する。



「鋼牙様にまさかこの様な日が来るとは思ってもおりませんでした。零様も、先のことを決め付けてはいけません。人の思いはまた、変われるのですよ」



「ふーん・・・」



それっきり、車内にまた沈黙が戻る。


それぞれが、それぞれの思いを流れる景色に馳せていた。


 


 


 




 


 


 


          完




























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hitori様、すごいですよ、これ、すごいです!零くん萌え!鋼牙もなんかいいです!素敵!!やっぱりみんな考える事は一緒ですねー。私は零は絶対子供好きだと思って、鋼牙達に子供が生まれたら「パパでちゅよー」って言って鋼牙に剣を抜かれる・・・と考えていました。その内、漫画で書きたいと思ってました。ふふふふ、銀牙の名前もご期待に応えますよ。零鈴が鉄板だなんて嬉しい言葉・・・。全然増えない零鈴に生きる私に希望をありがとうございます。またお勧めあったらよろしくです。R18は何度かチャレンジしたけど、門前払いですがw<駄目な子w
2012-07-29 Sun 08:08 | URL | 是空 #-[ 内容変更] | top↑
是空 様
なにそれ見たい!!

>鋼牙達に子供が生まれたら「パパでちゅよー」って言って鋼牙に剣を抜かれる・・・と考えていました。その内、漫画で書きたいと思ってました。


ちょー見たいです!!


鋼牙に剣を突き付けられても 平然としていられる零 萌え~。


>ふふふふ、銀牙の名前もご期待に応えますよ。


まぢですか!!


やった~~~~~♪


じゃ その前にいよいよ鈴ちゃんと…… ギャハー♪ hitori落ち着けっ!!
2012-08-01 Wed 21:17 | URL | hitori #-[ 内容変更] | top↑
くくくぅ
これを携帯でポチってたんですか?まじですか。

零くんの家族のお墓。これは最早聖域ですよね。
鋼牙といえども、やっぱおいそれと行く場所じゃないけど、親友であるからには行って上げて欲しい。鋼牙と、カオルと、お腹の子と。零にとっては一番心を許した現世のひとたちがこうやって墓参りするのって、ジーンときてしまいます。
零の過去のお話、鋼牙がどうやって知るか、私自身は想像も出来ませんでした、ポツリと話す零に無言で頷く鋼牙という想像は出来るのですが。・・・でも、親友に子供が出来たなら、しかも困難乗り越えた愛の先ならば、零もこうやって話しだすだろうなって心の底から思いました。

hitoriさんの雷牙銀牙の絡みのお話、鋼牙のカオルへの不器用な気遣い・・・胸アツです。しかし雷牙の「らい」が我雷法師からだとはw
零くん、人を愛せないのか、彼の心の傷ってもう癒えないのか。
考えると辛くなります。新作で、どうなるのかなー?
2013-12-03 Tue 11:01 | URL | Sousou #iLuF92wA[ 内容変更] | top↑
 
 
 
 
 
 
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